注連縄の起源
注連縄の起源は、古事記の代表的な神話の一つ「天の岩戸開きの神話」で天照大御神が天の岩戸から出てこられた時、天照大御神が天の岩戸に再び戻らないよう天の岩戸に引き渡したという「端出之縄(しりくめなわ)」のお話に基づきます。
「しめなわ」は「しりくめなわ」を省略した言葉で、更に「しめ」と省略される場合もあります。
また「端出之縄」と表記することもあり、これは藁(わら)を縄を綯(な)う時に、その端をところどころ出していくからです。
藁を綯い始め、最初に端を三筋、少し間を開けて次は五筋、また間をおいて今度は7筋というように、一定の間隔をおきながら三・五・七・三・五・七と繰り返し端を出していきます。「七五三縄」と書いて「しめなわ」と呼ぶのはここに起因します。
余談ですが、この垂らす端のことを「しめの子」と言います。
七五三で端を出していく理由についてですが
その理由としては、俗に合計が十五となるので、十五は天道成立の数であるからとする。
又縄を左綯いにするが、これも神話の故事に基づくのであって、これにも俗説がある。
即ち左綯いは天道の左旋に縁由し、左は陽で、陽には必ず陰を伴う縄の二筋なるは
”陰陽両道の表現なり”などと解くのである引用元:有職の話・八束清貫著
とされています。ちなみにこの方は神職を目指す者が必ず学ぶ「有職故実」の教科書を神社本庁の委嘱により編述されているこの分野の権威でもあります。
しめ縄が用いられる場所は何処?
しめ縄という物は、左縄によりて、縄のはしをそろえぬ物也。左は清浄なるいわれ也。端を揃えぬは、素直なる心なり。されば天照神の天の磐戸を出で給いし時、しりくめ縄とて、ひかれたるは、今のしめ縄也。浄不浄をわかつによりて、神事の時は必ずひく事に侍り、賎が家居にひく事も、正月の神事をいわいまつる心だてなるべし。
世諺問答
とあります。(読みやすくするためにあえて現代的な平仮名を使っています)。
神事は、清浄第一、神聖第一ですから、社殿、手水舎、神木、神札所、社務所、神門、鳥居、お神輿、辛櫃などなど、あらゆるところに注連縄は用いられています。
しめ縄は、左綯(ひだりない)の藁縄に紙垂(しで)と呼ばれる紙をつけていましたが、地方によって用いる場所や形態の大小が生じ、多くの種類が見られるようになりましたので、しめ縄の種類についても解説しておきます。
注連縄の種類
地方によってや、用いる場所や場合によって形状の大小など様々な種類の注連縄を見かけるようになりました。
「注連かざり」「おかざり」など装飾的な別名がつくほどです。原則としては、その年の新藁で縄は左綯いでそれに紙垂(しで)をつけます。
お注連(おしめ)
一般に用いる注連縄で普通縄のことです。東京近郊は普通縄の太さが細く「しめの子」は二筋づつ垂らし間隔は七寸五分おき程度でつくる事が多いです。「しめの子」の間に垂らしている紙垂(しで)には決まりはありませんが四垂れが多く用いられています。
板注連縄(いたじめ)
「しめの子」が隙間なく出ている注連縄の事です。見た目が「板」のように見える事から板注連と呼ばれています。
前垂れ注連(まえだれじめ)
板締めの板が少しづつ間隔を空け垂れ下がっており、商人の前垂れのように見える事から前垂れ注連と呼ばれています。
大根注連(だいこんじめ)
大根の様に中央が太く両端にいくに従って細くなっている注連縄です。通常は「しめの子」は付けず四垂れの紙垂を四枚つけ神棚の前などに用いられます。
日本一の大注連縄として有名な出雲大社の大注連縄はクレーン車を使って4~8年ごとに交換され、長さ13.6m、重さ5.2㌧もの大きさを誇り、近くで見るとその迫力に圧倒されます。
写真引用元: 島根県飯南町大しめなわ創作館
牛蒡注連(ごぼうじめ)
形状が細長く「牛蒡」に似ていることから牛蒡注連と呼ばれます。しめの子はありません。
輪注連(わじめ)
俗にいう輪飾りで、縄の部分を短くして上方で輪をつくり、しめの子を沢山出してある注連縄です。
昆布や橙、炭、海老などを飾り付け縁起を祝います。
注連縄のかけ方
お正月飾りなどでよく見かける輪注連などは輪を上にしてひっかけますが、一文字状の注連縄は、綯い始めを向かって右に、綯い終わりを向かって左にするのが一般的です。ただし、地域によっては、その反対にする場所もあります。また、地鎮祭など四方に注連縄を張る場合は、右奥(東北の隅)から張り巡らすのが一般的です。
正月飾りはいつまでに飾ればいいの?
門松や注連縄などの正月飾りについて、補足しておこうと思います。
一般的に正月飾りは、12月29日以降に飾るのは避け、12月28日までに飾る事とされています。
特に12月31日の大晦日は一夜飾り(ひとよかざり)になるためダメだという話はあまりにも有名です。
たまに、12月30日なら飾っても良いですよと書かれているサイトを見かけますが
旧暦では「小の月が29日、大の月が30日まで」で、31日は存在してませんでした。
つまり30日は旧暦では大晦日とされ一夜飾りと同じ意味になるので避けられてきました。
歳神様をお迎えするという正月飾りの意味を考えるならば、誠意にかける方法は避けるべきで12月28日までに飾って気持ちよく新年を迎えましょう。