チャペルでの結婚式に比べ、和の伝統的な「神前結婚式」は、よくわからない方が多いかもしれません。 クリスチャンではなくてもチャペルで結婚式を挙げることができるように、神社神道について全く知らなくても神前結婚式を行う事ができますので、宗教的な目線でとらえる必要は無いと思います。 神前結婚式は、大きく分けて神社で行う場合とホテルなどの結婚式場で行う場合があります。 神社で結婚式を挙げる最大の魅力は、初詣などで何度も訪れる事が出来る点と、子供や孫と「思い出の場所」として、歴史を重ねることが出来る点です。 見落としやすい確認場所として「バリアフリー化」があります。車いす対応が出来ていないばかりに折角の晴れ舞台に参列できないと、おじいちゃん・おばあちゃんに申し訳が立ちません。年配の親族が多い場合は神社の階段や通路などを実際に歩かせてもらうなど下見確認をしておきましょう。 余談ではありますが、挙式は神前結婚式で挙げ、披露宴はキリスト教式で行う方もおられますので、しっかり関係者で相談しながら素敵な1日になるよう参考にしていただけたらと思います。
神前結婚式の流れ
①入場
新郎新婦・両家の両親・親族の順で入場します。神前に向かって、右に新郎側、左が新婦側が座ります。
巫女さん又は神職さんが前を歩いて誘導してくれますので、誘導に従っていれば大丈夫です。
②斎主挨拶
神職さんが、これより結婚式を執り行う旨の挨拶をします。
③修祓(しゅばつ)
「修祓」とは、お祓いの事です。巫女さん又は神職さんが「頭をおさげください」などの進行をしてくれますので、その通りやっていれば大丈夫です。
④献饌(けんせん)
神職さんがお酒やお水の蓋を開けてお供えするのですが、最初から蓋を開けておき省くケースも多いです。
⑤祝詞奏上(のりとそうじょう)
神職さんが両家の結婚を神様に報告し、末永い幸せを祈願します。
⑥三献の儀(さんこんのぎ)
三々九度の盃のことです。新郎新婦が座っている机に3つの盃を乗せた台(三方)が運ばれてきます。
最初に、小さい盃が新郎に渡されますのでそれを両手で受け取ります。その盃へ3回に分けてお酒が注がれますので3回に分けて飲みます。飲み終わったら盃を渡してくれた方(神職さん又は巫女さん)に手渡しで渡します。盃は3種類(一の盃・二の盃・三の盃)用い一つの盃で3献を行ったら、次の盃でまた3献を行います。大・中・小の盃で合計9回行う事から三々九度と呼ばれるようになりました。
【盃の順序】
・一の盃(小サイズ):新郎⇒新婦⇒新郎
・二の盃(中サイズ):新婦⇒新郎⇒新婦
・三の盃(大サイズ):新郎⇒新婦⇒新郎
お神酒は無理して飲み干す必要はありません。お神酒に口を付ける程度で構いません。
注意しないといけないのは、和服の袖が重く腕を上げづらい為、口を盃に近づけて猫背になってしまう事です。
全員が新郎新婦に注目している場面でもあり近年はスマホの普及もあって手軽に動画記録が残ってしまうので美しい姿勢で、盃を持つ指も揃える事に集中しましょう。
※知っ得メモ お神酒は3度に分けて注ぐのが原則で、この注ぎ方には2つの方式があります。 |
⑦誓詞奏上(せいしそうじょう)
新郎新婦が自分の席から神前に進む出て誓いの言葉を奏上します。奏上する内容はホテルや神社によって変わりますが、結婚式を申込む時に本番と同じ内容のものを練習用として渡してもらえるのでそれを読んで緊張した場面でもスラスラと読めるように練習しておきましょう。
「誓詞」は新郎新婦が座っている机の上に置いてある事が多く、それを持って神前に進むのを忘れないようにしましょう。
参考のため、例文を記載しておきます
今日のよき日に、○○神社の大御前(おおみまえ)において、私達は結婚式を挙げます。
これからは神の訓え(おしえ)のもと、相和し(あいわし)、相敬し(あいけいし)、苦楽を共にし、明るく温かい生活を営み、子孫繁栄に勤め、終生変わらぬことをお誓いいたします。
幾久しい御守りをお願い申し上げます。
令和○○年○月○日夫 山田 太郎妻 花子
この時の注意点は、奏上する時の「誓詞」の位置です。「誓詞」を持つ手が低いと目線が下がってしまうので猫背になりがちです。「誓詞」は口~目線の位置まで上げて奏上するようにしましょう。本番は、緊張もありますが慣れない和装により袖の重さで手が下がりがちなるので気を付けましょう。
⑧指輪の交換
神前結婚式には本来ありませんでしたが今や定番の演出になりつつあります。指輪の交換は、希望者のみ行い、希望しない場合は事前にスタッフに伝えておけば粛々と式を進行してくれます。
⑨玉串拝礼
玉串を捧げて拝礼します。神職さん又は巫女さんが新郎新婦が座っている席まで玉串を持ってきてくれるのでそれぞれが玉串を受け取ります。玉串を受け取ったら神前の台の前まで進みます。玉串を時計回りに回して玉串の根元を向う側に向けて台の上に置きます。台の上に置いたら2礼2拍人1礼をして自分の席に着席します。玉串の順番として新郎・新婦⇒(媒酌人)⇒親族代表の順番で行われます。神職さんは一番最初か最後に行います。
⑩撤饌
神職さんがお酒やお水の蓋を閉めるのですが、蓋を開けたままで省くケースも多いです。
⑪斎主祝辞
神職さんが滞りなく結婚式が執り行われ事を告げ、「おめでとうございます」の祝辞を述べてくれます。
⑫退場
退場は、誘導の方の指示に従っていれば大丈夫です。
結婚式の費用は
神社で結婚式をお願いした場合、神社に支払う金額は3万円~20万円代と大きな開きがあります。
雅楽の生演奏をお願いすると5万円程度の追加料金が発生するなど神社によって価格設定は違うので、神社に問い合わせるのが最も確かな方法です。
大きな神社になれば貸衣装を揃えていたり結婚式用の会館を設置している場合もありますが、ほとんどの神社では衣装や会館は備わっていませんので、その場合はホテルなどの機関を利用して着付けをするようになります。
ホテルの場合は、だいたいホテル内の式場で挙式をあげる事が多く費用も明確になっています。オプションサービスでホテルから神社までリンカーンなど大きな車で送迎してくれるホテルもありますが、バリアフリーの問題や、移動の負担を考慮するとホテル内の式場で結婚式を挙げる方が大半です。どちらが自分たちに適しているかは関係者で相談して、決定するのが望ましいでしょう。
チェックしておくポイント
親族紹介の仕方
親族紹介は、「たぶん出来るだろう」という前提で、見過ごしやすいポイントだったりします。
神社で挙式を行い退出前に、ご両家の「親族紹介」をしたいと希望された時のお話です。
最初は「(起立)新郎の父です・新郎の母です(着席)」と言ってお辞儀をして着席する流れでスタートしたのですが、その後は、「(起立)新郎の叔父です・新郎の叔母です(着席)」「(起立)新郎の叔父です・新郎の叔母です(着席)」のオンパレードで、新婦側の親族もそれにつられて全員「(起立)新婦の叔父です・新婦の叔母です(着席)」が最後まで続いたことがありました。
せっかく集まってくれた親族に恥をかかすわけにはいきませんし、ご両家とも「叔父・叔母」以外の情報が無い状況は避けなければなりません。親族紹介の仕方を前もって相談しておく気配りは大切だと思います。
慣れていない和装
普段は何も考えずにできている仕草が、和装になるとできなくなります。袖が机に引っかかり机の物を地面に落としてしまったり、猫背になった新郎の胸元の襟が開いてだらしなく見えてしまったりと、洋服とは勝手が随分と違います。
その日1日は、姿勢を正し、大きな袖なので動きにくいことをしっかり認識しておくことが大切です。
三々九度を略儀で行う神社もある
三々九度を前述の方法ではなく下記の略儀で行う神社もあります。
・一の盃(小サイズ):新郎⇒新婦
・二の盃(中サイズ):新婦⇒新郎
・三の盃(大サイズ):新郎⇒新婦
これだと「二・三・六度」にしかなりませんが、宮中の神前式では、新郎新婦が別々の土器で一度お神酒をいただくだけです。
一般での「盃ごと」は旧来の風習に調和した仕方であって、純然たるお神酒をいただくという意味からすると、宮中の方法が至当であると言われています。
つまり、どちらの方法であっても間違っているとは言えないという事なので、深く考える必要はありません。